子供の失神
(2018.07.04更新)
久しぶりに知行医師に登場してもらいます。
昭和43年、北九州で開業していたころのエピソードのようです。
それは水曜日の午後だった。外来もやっと少し暇になったと思った頃、慌ただしく子供が担ぎ込まれてきた。小学4年生の男児。意識はなく四肢は弛緩している。隣のおじさんが子供の家をのぞいて、畳に倒れているのを発見、すぐ抱き抱えてきた。子供にも見られる失神の原因として QT延長や ARVDによる心室細動はまだ知られていない昭和43年のことである。心拍123/分、整、呼吸数や血圧は正常、何しろ深い昏睡である。てんかん発作の後とも思えない。子供の脳卒中はまずない。心雑音は、子供で聴かれる機能性雑音のみ。急激にくる子供の意識障害の病名を目まぐるしく考えながら、ふと、糖尿病性昏睡もありうると顔を近づけると、全く想像外の事態がひらめいた。子供の家に人を走らせるとたたみの隅に何と一升瓶が転がっていた。話はこうである。両親がいない3時頃学校から帰りお腹がすいたなと部屋を見渡すと父親の愛用の一升瓶がある。どれどれ少し味見してみようというわけで、手につけたが、ついつい深酒になって酔いつぶれてしまったわけである。一見落着でほっとした周りの人達も唖然としながら帰っていった。後で帰ってきた親に叱られたかどうかは定かではない。北九州で開業していた頃のことである。
この少年は僕(院長です)より一世代上になりますので、今では還暦のころでしょうか。
その後、どのような人生を歩まれているのか、思いを寄せてしまいます。子供さんとお酒を酌み交わしておられるかもしれませんね。