恩師
ここに至るまでに恩師と呼ばせてほしい先生方に多くお会いすることができました。医師となる前にも後にも、大切なことをおしえていただき、かけがえのない財産となっています。先日も、医師としての基礎を教えていただいた北九州の恩師から、奥様がお描きになったたいそう立派な絵画をいただきました。こんな小さなクリニックにはもったいないですが、正面入り口に飾らせていただいております。患者さんの癒しにもつながりほんとうに有難いことで、感謝に堪えません。
このご恩に報いるためにも、より一層精進しようと思います。
下記の文章は父が大学で教えていたころのユーモラスなエピソードです。
大学で教えていた頃のことである。浜口町の焼鳥屋のカウンターで家内と2人でくつろいでいた。通路の後ろの畳では学生の一団がはしゃいでいた。そのうちの1人が小生の横にいて親しげに話し掛けてくる。「おじさんも仕事の帰り?」と言うので「そうだよ」と意気投合。やがて小生の背に腕を回して一緒に歌おうと言うので、こちらも気持ちよく調子に乗っていた。そのうちに座敷の連中が小生に気づき(やかましい、厳しい、で有名だった)ゴソゴソと帰り支度を始めた。外は雨になっていた。そこで、くだんの彼も一緒に出て行ったが、即、引き返してくるや、「すみません、楽しかったです!!」とピョコンと頭を下げるなりまた仲間を追って走って行った。多分、彼だけが講義に出ていなかったので小生を知らなかったものと察し、笑ってしまった。
次は別の話で、そんな日曜日の午後のこと、その頃は時々気晴らしにパチンコを楽しんでいた。ある日、つっかけにジャンバーを着て一台の前に座っていると、横の兄ちゃんがちらちらとこちらを窺っている様子だった。彼の足元には沢山の収穫の玉が積まれていた。しばらくすると決心したようにこちらに向き直って、「先生、この台よくでますよ!」と言うなり台を譲って笑いながら逃げるように去って行った。あっけに取られて「ありがとう!」と言う間もなかった。
2人とも今頃は立派な医師になって患者から慕われていることだろう。